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15|現在地
現在地 壊れない選択肢を残すために 私は、2025年7月末までIB校の国際寮で働いた。 同じ会社で4回転勤をし、それぞれ異なる大学の国際寮とIB校を経験した。 エピソードに綴られていることは、全て体験談だ。 その後、妻とともに中古のマンションを購入し、生活の拠点を関西に移した。 環境を変えるためではない。 私達ももう若くはない。 人生の残り時間を前提に、妻と私の生活の規模と速度を整え直すための選択だった。 私は移住先でフォークリフトの資格を活かし、倉庫で働いた。 毎日10〜20kgの商品を抱え、棚に積み、降ろす。 特別な肩書きのある仕事ではない。 だが、この仕事を選んだ理由がある。 一度落ちた体力と筋力を回復させること。 生活の感覚を身体から取り戻すこと。 机の上だけで考えていると、世界は簡単に狭くなる。 現場から離れると、自分が何者でもないことを忘れ、知らないうちに肥大する。 それを避けたかった。 体重は、いま自分が最も自然だと思える位置まであと1kg。 90〜100cmの段差なら、ためらわずに飛び乗れる程度の筋力も戻った。 数字としては小さい

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7月4日読了時間: 5分
No.005 生活導線設計|情報はあった。それでも人は迷う。
ガイドラインはあった。救急への相談先もあった。学校への連絡手段もあった。保護者への連絡ルールもあった。 情報は、すべて存在していた。 それでも、その夜、判断は止まった。 足りなかったのは、たった一つ——「この学生にとっての、ふだんの体温」だった。 この設計事例は、「情報が足りない」ことではなく、「必要な情報が、必要な場所になかった」ことに介入したものです。今回は「発熱時の受診判断」を例に、生活導線設計の考え方をご紹介します。 設計のポイント ① 基準値と「個人差」をセットで扱う 平熱・既往症・本人の体感——基準値だけでは見えない個人差の情報を、判断の材料として組み込めるようにしました。 ② 「どの情報を、どこまで持つか」を設計する 健康情報は、施設が一括して預かろうとすると、個人情報保護の観点で立ち止まることがあります。本事例では「預かるか、預からないか」ではなく、「本人が、必要な範囲の情報を、必要な場面で提示できる」という形を、設計の出発点として整理しました(※本記事では、本人が必要な健康情報を携帯する仕組みを便宜上「健康基礎情報メモ」と呼んで

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6月12日読了時間: 3分


No.004 安全設計|現場の判断を支える熱中症対応
マニュアルがあっても、現場では迷う。 「これは熱中症か」「誰に連絡するか」「今すぐ救急か」——判断を迫られる瞬間に、人は思ったより動けない。 この設計事例は、そのような「迷いの構造」に介入したものです。 判断の順序を整理し、現場担当者が次の行動を選べるよう、安全設計を行いました。 設計のポイント ① 判断を「段階」に分けた 症状の重さを三段階に整理し、それぞれに対応行動を対応させました。「どれに当てはまるか」を確認するだけで、次の行動が決まります。 ② 「誰が動くか」を明示した 現場担当者・管理者・救急——それぞれの役割を分けることで、「自分がやるべきこと」が一目でわかる構造にしました。 ③ 言語の壁を取り除いた 日本語と英語の併記により、外国人スタッフや外国人来訪者がいる環境でも使えるよう設計しました。 ④ 配慮設計を加えた AED使用時など、衣服の着脱が必要な場面を想定し、可能な範囲で同性の人間が対応する、周囲の視線を遮るなどの配慮事項をツール内に明記しました。 ツール 実際に使用したツールをご覧いただけます。 現場ですぐ確認できるよう、スマ

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6月12日読了時間: 2分
No.003 文書再設計|規定が存在しない
条文が曖昧なのではありません。 条文そのものが、存在しませんでした。 来客・外来者・訪問者に関する条項:なし。 寮則本体(全14条)に、来客規定は存在しない。 出典:ある学生寮の寮則(全14条) ・来客規定:存在しない ・判断者:記載なし ・対応手順:記載なし ・責任者:記載なし 第13条・第14条により、寮監長の裁量に一任されていた。 来客への対応は、寮監長が「その都度判断する」構造になっていた。 手順も、記録も、引き継ぎも、どこにも書かれていなかった。 規定がないということは、何をしても「規則違反ではない」ということでもある。 同時に、何をしても「根拠がない」ということでもある。 担当者は、毎回ゼロから判断していた。 来客申請(入居者が事前に届け出る) ↓ 受付確認(管理責任者が来客者情報を記録) ↓ 滞在エリアの案内(共用スペースのみ) ↓ 滞在時間の確認(午後9時までを基準とする) ↓ 退出確認・記録保存 ・来客規定を寮則本体に明文化しました ・判断者を管理責任者として明記しました ・手順を文書化し、引き継ぎを可能にしました ・記

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6月9日読了時間: 2分
No.002 運営構造|外泊安全の再設計
現場の担当者が「なんとなくやっていた確認」が、組織の安全を支えていることがあります。 その確認が文書に存在しないとき、何が起きるか、その事例です。 外泊届を提出する。 担当者が許可する。 以上。 出典:ある学生寮の外泊規定(典型的な日本の大学寮) ・誰が安全確認をするか:不明 ・宿泊先確認の手順:なし ・保護者確認の位置付け:なし ・次の担当者への引き継ぎ:不可 ある現場では、担当者が独自に宿泊先をGoogle Mapで確認し、電話番号と施設名を記録していました。 学校からの指示ではありませんでした。 担当者個人の判断でした。 その確認は、どこにも書かれていませんでした。 担当者が替わったとき、確認は消えました。 引き継ぎようがなかったからです。 これは担当者の問題ではありません。 確認の仕組みが、組織ではなく個人に宿っていました。 外泊申請 ↓ 保護者への確認(連絡記録を残す) ↓ 寮スタッフによる宿泊先確認(施設名・電話番号・地図) ↓ 記録保存(台帳または共有フォルダ) ↓ 承認・通知 再設計のポイント: ・判断者を明確にしました

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6月9日読了時間: 2分
No.001 文書再設計|来客規定の再設計
「長時間」という言葉を入口に、設計の問題を示します。 外来者は、正当な理由なくして長時間寮内に滞在してはならない。特に午後9時以降の滞在は厳禁する。 「長時間」定義なし 「正当な理由」定義なし 「判断者」不明 Visitors are not allowed to stay for a long time without a justifiable reason. In particular, staying after 9:00 p.m. is strictly prohibited. 「long time」定義なし 「justifiable reason」定義なし 「decision-maker」不明 右側の英文はGoogle翻訳による出力をそのまま掲載しています。 翻訳の品質を批判するものではありません。原文の設計上の問題が英文にどう現れるかを示しています。 来客者は共用スペース(ラウンジ・談話室)にて午後9時まで滞在できます。 延長が必要な場合は、事前に管理責任者の許可を得ること。 管理責任者の指示に従うこと。 「時間」数値で

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6月7日読了時間: 2分
修復可能性を守る設計
(Time-critical design) 修復可能な時間を逃さない設計 生活空間を伴う教育環境では、問題は衝突としてではなく、生活の変化として現れる。 夕食を一人で取るようになる。 グループ活動への参加が鈍くなる。 会話が減る。 これらは問題の結果ではなく、問題の初期信号である。 そして同時に、関係の修復がまだ可能であることを示す時間的な合図でもある。 寮はそれを最初に観測する場所になる。 CAS活動を巡るグループ内の行き違いから孤立を感じ、休学に至った生徒がいた。 最初の異変は生活の中に現れていたが、学校側の対応が本格化した時点では、すでに修復可能な時間が大きく失われていた。 帰国前、彼女は「最初からやり直したい」と話した。 この言葉は、問題の本質が対立ではなく時間にあったことを示している。 修復可能性には「時間の窓」がある。 初期段階では対話で戻せる問題が、時間の経過とともに配置変更や休学といった制度的対応に変わっていく。 これは問題が悪化したというより、対応可能な手段が時間とともに減少したということに近い。 教育現場では、この「時間の窓

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5月21日読了時間: 3分
構造に飲み込まれることの恐怖
この文章は、構造論の網羅や社会制度の分析を目的としたものではありません。 何かを完成させたり、他者を説得したり、理論を提示するためのものでもない。 ただ私が、構造の中で経験した内面の変化と、その限界を記録したエッセイです。 ——内部の浸食について 「構造に飲み込まれる」ことの本当の恐怖は、外部からの強制ではなく、自分自身の「内部の浸食」にある。 他者の命令ではなく、自分の中の麻痺から始まる。 そして、その麻痺が社会性と呼ばれたとき、私たちはもう自分を見失い始めているのではないか。 1. 身体感覚の剥離 「本当は違うと思っているのに、そう振る舞う」とき、心と体、言葉と行動の間に「ズレ」が生じる。 最初は違和感として自覚される。しかし、その状態が続くと、違和感そのものが薄れていく。麻痺する。 しかもその麻痺は、ときに"順応"や"社会性"として評価されてしまう。 これが、自分が自分でなくなることの第一歩だと思っている。 2. 「中立」という名の思考停止 「普通はこうだ」「仕方ない」という言葉は、一見すると客観的で冷静な判断に見える。...

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5月21日読了時間: 5分
現場が壊れる構造の整理
属人化による過剰な責任の集中(寮という現場から) この稿は、約9年にわたって複数の国際寮とIB校で働いた記録から導き出したものだ。抽象的な構造論ではなく、実際に起きた出来事(エピソード1〜13)を通して見えてきた壊れ方のパターンを整理した。 ※これは、誰かを断罪するための整理ではない。私自身が、破綻を防ぐ視点から現場を振り返るための記録でもある。 寮における属人化とは、本来は組織として設計・担保されるべき判断や支援の仕組みを、特定の個人の判断力や忍耐力に委ねてしまう状態を指す。 このとき、業務は役割やルールではなく、その人の経験、記憶、人柄、我慢強さによって回るようになる。 結果として、知識や判断は共有されず、他の職員は判断を止め、相談や苦情は一人の人間に集積する。 表向きには「信頼」や「頼りにしている」という言葉で語られるが、構造として見れば、それは設計の放棄に近い。組織は判断や支援を設計する代わりに、個人の善意と消耗を前提条件として組み込んでしまう。 「回っている」という錯覚 この状態が続くと、学校側は「この体制で現場は回っている」と錯覚する

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5月21日読了時間: 5分
エピソード 13-2|責任の空白地帯
欠如 この衝突は、防げたはずだった。 必要だったのは、Ground Rulesだ。 このブッフェは「全員が一巡できること」を前提にしている 二巡目以降は、全員が来た後で。 これはルールではなく、教育方針だ。 これを、事前に、明確な言葉で提示する。 そうすれば、 「理不尽な制限」ではなく 「システムの仕様」として 受け入れられたはず。 だが、そのルールは存在しなかった。 なぜか。 作る責任者が、いなかったからだ。 空白 学校と管理会社の間に、誰も引き受けなかった領域があった。 想定される摩擦を洗い出す。 起こりうる衝突を「起きる前提」で考える。 それを言語化して共有する。 これができる人間を、置かなかった。 いや、置こうとしなかった。 学校も管理会社も、こう考えていた。 「現場は回っている」 「問題が出たらその時考えればいい」 そして問題が起きたとき、前に出てきたのは コスト 契約 ルールの後付け 「寮の問題」というラベリング つまり、経営側の言語だった。 調整 揉め事が起きたとき、私は間に立った。 喫食していない子どものこと、コストのことを説明し

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5月18日読了時間: 3分
エピソード13-1|ブッフェのこと
出来事 国際寮の夕食はブッフェ形式だった。 厨房スタッフの頑張りのおかげで、評判がいい。 毎日、その日のメニューが並び、生徒たちは自分の皿に好きなものを取って席につく。 最初の一巡目は、誰もが適量を取る。 二巡目になると、気に入ったものをどっさりと盛る子も出てくる。 逆に、私がこれを取ると「後の子の分がなくなる」ことを心配する学生もいる。 そういう状況に対しては、また作ってもらうからとりあえず持っていけ、で済ませる。 本当に作れるかどうかは、どの程度の食数を消化したか、材料があるかどうかで決まる。 そして、最終的には必ず用意した料理が余る。 それは関係者の賄いに回されるか、処分される。 問題 ある日、それが問題になった。 「どうせ捨てるなら」 外国人教師が言った。 「どうせ最後には捨てるんだろう? だったら、金を払っている人間が好きなだけ食べてもいいじゃないか」 彼らの論理は明快だった。 ブッフェは自由裁量のはずだ。 金を払っている。 最終的に廃棄されるなら、今取っても同じではないか。 確かに、理にかなっている。 だが、私は反論した。...

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5月18日読了時間: 3分
エピソード 12|ラウンジ清掃のこと
「 S 」 女子IB生のS、彼女はこの寮には住んでいない。 通学の子だ。 よく寮に遊びに来る。 寮と外の境界を、自由に行き来できる数少ない存在だ。 何度も顔を合わせているうちに、私に対する恐怖心も和らいだようだ。 日本語が非常に上手なので聞いてみたところ、母上が日本人、父上が英国人と教えてくれた。結婚を機に、父上は日本駐在員として活躍されることを選んだのだそうだ。 生まれながらのバイリンガル、彼女の人生は、生まれた時からストロングポイントが与えられている。 とてもラッキーだが、ご両親の意識がそこになければこうはならない。 ここまではその通りの話なんだが、私はこの当時、大きな思い違いをしていたようだ。 私だけでは無いと思うので説明しておきたい。 二つの言語を持つということは、二つの価値観を行き来することでもあるらしい。 例えば、日本語を話す時は礼儀や謙虚さを意識し、英語を話す時はより個人の主張を強めるなど、言語によって性格や振る舞いが変わる感覚(Cultural Frame Switching)を持つことは少なくないようだ。 さらに、子によってはア

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5月18日読了時間: 5分
エピソード 11|最後のメッセージ
出会い Aは日本人だが、Pre-IBを修了してIBDPに進級、寮から学校に通っている。 入寮当初は、まだまだ中学生時の幼さが残る女の子だった。 背は小さく、声も細い。 初対面の時、私が話しかけると緊張していた。 英語には相当の準備をしたようだが、授業についていくことが出来ず、毎晩泣きながら復習と予習をしていた。それを私はドア越しに知っている。 彼女の生活リズムは独特で、夕食後はすぐ眠りにつき、真夜中の2時か3時に起きて、勉強を始める。 ある時、授業が早く終わった日、ラウンジで机に突っ伏して寝ている彼女を見つけた。 教科書が開いたまま、ノートには英単語がびっしり。 よだれがノートにシミを作っている。 声をかけて起こすと、彼女は一瞬、自分がどこにいるのかわからない顔をした。 「部屋で寝なさい」 「…はい」 関わり 寝不足が続いているのか? 生活への影響を心配したが、状況的にギリギリで崩れなかったところがえらい。 その代わり、土日はほぼ寝ていて連絡が取れない。 彼女と私は入寮当初から変わった関係が続いていて、ラウンジや食堂で出会えば、時事問題の質問をす

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5月18日読了時間: 7分
エピソード10|宿泊の話
親が来る 訪ねて来た親に対して、親切や気遣いを示せば、子どもは喜ぶ。 それはごく自然なことだと思う。見返りを前提にした行為だとも考えていない。人として、普通のふるまいだ。 わかる人だけが気づいてくれれば、それでいい。 アイソレーション・ルーム 親が宿泊する際に使っていた部屋は、普段は空室だった。 なぜならそこは、本来「アイソレーション・ルーム(隔離室)」だからだ。学生が感染症に罹った場合、一時的に待避させるための部屋で、冷蔵庫、バス、トイレが備わり、生活が完結できるようになっている。 食事だけは、私が「病人食」と呼んでいるものを運ぶ。医師の許可が下り、回復すれば、学生は元の部屋へ戻る。 コロナやインフルエンザが流行していた時期には頻繁に使用したが、それ以外の期間は、ほとんど使われることがなかった。そのため、便宜的にゲスト用の部屋として流用することができた。 問題があった しかし、問題があった。 学生寮では、必ずしも衛生意識が徹底されているとは限らない。特に男子学生は、外出から帰寮しても、トイレの後も手を洗わない者が多数いる。それが意味するのは、大

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5月18日読了時間: 5分
エピソード01|壊れた楽器
序文 寮で過ごした時間の中で、一人の学生と、二度、同じ場所に立った。 一度目は、祖父の形見の楽器が壊れた日。 もう一度は、共同生活のルールをめぐって、 彼と私が別々に登りかけていた梯子が、同時に外れた時だ。 次の二本(エピソード1、エピソード8)を読んでほしい。 生活と学業のあいだで 留学生寮で働いていると、 学生の生活の仕方が、そのまま学校での様子につながっていることを感じる。 ある中国人の男子学生がいた。 エピソード8の彼だ。 来日当初の彼の家庭は不動産業を営み、裕福だった。 しかし、本国の不動産バブルが弾けると状況が一変した。 留学にかけられる余裕が限られてきたようだ。 親に負担をかけている分、彼は真面目で、学業に熱心だった。 一方で、寮の生活面では摩擦が多かった。 夜型の生活、深夜の通話、時間の感覚の違い。 彼だけではない。全ての学生に起こり得ることだ。 悪意があるとは思わなかったが、 共用の洗濯機の占有など、共同生活の中では問題になりやすい。 徐々に遅刻が増え、学業の集中力も欠けるようになった。 それが文化の違いなのか、彼個人の生活習慣

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5月18日読了時間: 3分
エピソード 02|文化を説明した日
問題 留学生寮で働いていた頃、生活指導がうまくいかない場面が何度もあった。 ゴミの分別や夜間の騒音。 学生たちは、本国で馴染んでいた生活をそのまま持ち込む。 注意しても、行動は変わらない。学生だけではない。 これらは外国人教師といえども同じだった。 ルールを気にしない。皆、自分が思う通りのことしかやらない。 叱ることにも意味を感じられなくなる。 転換 ある時、やり方を変えた。 伝わらないことへのもどかしさがあったからだ。 ルールを守らせるのではなく、文化を説明することにした。 文化とは、ルールの背後にある"なぜそうするか"の集積だ。 だから私は、その部分を説明してみることにした。 実践 ゴミが分別されなかった場合、誰が、どんな作業をすることになるのか。 私がゴミの分別をしている実際の様子を写真に撮り、学生に配布した。 ゴム手袋とトングで、残飯の付いたペットボトルを袋から取り出している。 それでも従わない学生には、分別されていないゴミを部屋に戻した。 苦情は出たが、方針は変えなかった。 自分の後始末は自分でさせる、これがないと私の仕事は前に進まない

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5月18日読了時間: 3分
エピソード03|それでも言えなかったこと
今になって振り返ると、何かを言うべきだったのかもしれない、と思うことがある。 彼女は、ほとんどの時間を勉強に使っていた。 授業が終わると部屋に戻り、食事の時間になっても姿を見せないことがあった。 食堂ではなく、自分の部屋で食事を済ませることが多かった。 誰かに合わせるより、自分のペースを守ることを選んでいるように見えた。 机の上には教材とノートが積み上がり、ベッドは、休むためというより、一時的に体を横にする場所になっていた。 共用スペースで誰かが話していても、そこに加わることはなかった。 外に出る理由も、特に見当たらなかった。 16歳や17歳でしか使えない時間が、静かに、勉強の中に吸い込まれていくように見えた。 16歳で読む本と、30歳で同じ本を読むのとでは、印象が違う。 その年齢でしか開かない扉があると私は思っている。 周囲の学生たちは、本を読んだり、映画を観たり、体を動かしたりしながら、それぞれの形で時間を使っていた。 彼女は、その輪の外にいた。 悪意があったわけでも、拒んでいたわけでもない。 ただ、部屋に戻り、机に向かっていた。 私は

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5月18日読了時間: 2分
エピソード 04|20人の重さ
子ども20人+文化差20人──高校留学生寮の知られていない現実 誤解 「20人なら楽でしょ?」 海外から新入生を迎える時、IB担当者からそう言われたことがある。 そのとき、私は返答しなかった。 会ってみなければ、わからない。 しかし、実際に寮にやって来た高校留学生たちは、私が想像していた「子ども」とは大きく異なっていた。 彼らが"できない子"なのではない。その背後には、学業に集中させるための家庭の合理と生まれ育った国の文化がある。 朝、起きられない。 食事のタイミングが分からない。 洗濯物を放置する。 ゴミの分別ができない。 年齢は16〜18歳だが、生活能力はまだ発展途上に見えることもあった。 これが、私が国際寮で見てきた現実である。 密度 「高校生」と聞けば、多くの人はこう想像する。 もう大人に近い存在であり、 自分のことは自分ででき、 進路についても自ら考え始める時期だと。 しかし、寮に入ってくる留学生の多くは、生活という点では「大人の手を離れて間もない子ども」に近い。 朝、自分で起きる習慣がない。 3食を整えて食べた経験が乏しい。 洗濯や掃

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5月18日読了時間: 7分
エピソード 05|学校が規則を崩した日
――私が沈黙を選んだ理由 例外 一人の学生が寮を出たいと申し出た。 家庭は裕福で、両親は故郷でもちょっとした有名実業家という話だった。 過去に問題行動があり、進学の過程も平坦ではなかったらしい。ブランクもあった。 日本のIBを選んだのも、選択というより、本人の進み方を整理した結果だったように見えた。 彼は学業成績が良いとは言えなかったが、カナダ国籍を取得した兄の影響もあって、英語だけは流暢だった。 香水をつけ、ブランドものを身にまとい、地方の学校にはそぐわない雰囲気をまとっていた。 それでも、不思議と私との会話は成立した。 2人とも「Bruno Mars」の大ファンだった。 音楽の話だけは噛み合い、学校の言葉には耳を貸さなくても、私の言葉には反応した。 学校の寮は、華やかさとは無縁の場所にある。全寮制は18歳の彼にとっては退屈で、息苦しい環境だったのだろう。学校と交渉の末、彼は一時間かけて街中から通学することを認められた。 条件が通らなければ退学し、別の国でやり直すつもりだと聞いた。 前例 私はそこで立ち止まった。 この判断が前例になることは、容

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5月18日読了時間: 3分
エピソード07|文化摩擦のこと
序文 国籍の違いが生む摩擦に、現場でどう向き合うか。経験から必要だと感じたことを、整理した。同じ問いを持つ人がいれば、「現場知」「実践知」としてå参考になるかもしれない。 「分かり合える」という傲慢を捨てる 留学生寮では、国籍が見えない距離を作ることがある。 中国人学生が、台湾人に友人関係を求めた。圧倒的に台湾人学生の在寮数が多かったからだ。 話はする。だが、活発な交流には至らなかった。 私は政治の話をしたいのではない。 この国籍を持つ子たちが同じ空間で暮らす時、何が起きるか。 それだけの話だ。 先の両国に限ったことではない。 イスラエルとその周辺国、インドとパキスタン、日本と韓国・中国・北朝鮮。 宗教、民族、歴史、領土。 理由はさまざまだが、センシティブな状況にあることに変わりはない。 都内の大学寮を管理した時、ドイツ人とポーランド人、ロシア人のコミュニティは、三者とも交流が活発ではなかった。 活発にしたかったのではない。対立していた訳でもない。 自然と、活発にならなかった。交わらなかった。 それに気づいた。 化学反応は必ず起きる...

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5月18日読了時間: 5分
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