No.005 生活導線設計|情報はあった。それでも人は迷う。
- 6月12日
- 読了時間: 3分
ガイドラインはあった。救急への相談先もあった。学校への連絡手段もあった。保護者への連絡ルールもあった。
情報は、すべて存在していた。
それでも、その夜、判断は止まった。
足りなかったのは、たった一つ——「この学生にとっての、ふだんの体温」だった。
この設計事例は、「情報が足りない」ことではなく、「必要な情報が、必要な場所になかった」ことに介入したものです。今回は「発熱時の受診判断」を例に、生活導線設計の考え方をご紹介します。
設計のポイント
① 基準値と「個人差」をセットで扱う
平熱・既往症・本人の体感——基準値だけでは見えない個人差の情報を、判断の材料として組み込めるようにしました。
② 「どの情報を、どこまで持つか」を設計する
健康情報は、施設が一括して預かろうとすると、個人情報保護の観点で立ち止まることがあります。本事例では「預かるか、預からないか」ではなく、「本人が、必要な範囲の情報を、必要な場面で提示できる」という形を、設計の出発点として整理しました(※本記事では、本人が必要な健康情報を携帯する仕組みを便宜上「健康基礎情報メモ」と呼んでいます)。
③ 一つの出来事が、複数の立場に影響することを前提にする
本人・現場担当者・保護者——それぞれが異なる立場でこの出来事に関わっています。情報の不足は、一人の問題ではなく、関わるすべての人に影響します。
④ 対応の経緯を、後から確認できる形にする
その場の判断は、その時点では妥当に見えても、後になって「何があったのか」を尋ねられることがあります。判断のプロセス自体を、後から振り返れる形で残すようにしました。
実物/図
受診までの導線図(イメージ)
体調の変化
↓
基準値と「ふだん」を照らす ─ 本人・現場担当者
↓
受診が必要か判断する
↓
どこへ行くか(条件で変わる)
↓
必要なもの(保険証・在留カード・健康基礎情報メモ等)
↓
連絡先(誰に・いつ・何を) ─ 現場担当者・保護者
↓
対応の記録
※ 個人を特定する情報は含まれません。導線の「型」を示すものです。
何が変わったか
項目 | Before | After |
|---|---|---|
判断基準 | 基準値のみで判断される | 基準値+個人差(ふだんの状態)を踏まえ て判断できる |
個人情報 | 「預かるか、預からないか」で止まる | 「どこまで・誰が持つか」を設計できる |
影響範囲 | 当事者個人の問題として扱われる | 本人・現場担当者・保護者、関係者の導線 として扱われる |
対応の経緯 | 私的なルートでのみ伝わる | 対応のプロセスが後から確認できる形で残る |
クロージング
この事例で不足していたのは、病院の情報ではありませんでした。
37.5℃という基準も、相談窓口も、受診先も存在していました。
それでも判断が難しくなったのは、その判断を支える前提情報が、その場になかったからです。
生活導線設計とは、情報を増やすことではありません。必要な人が、必要なタイミングで、必要な情報にたどり着けるようにする設計です。
今回は「病院受診」を例にしましたが、携帯電話の契約、銀行口座の開設、ゴミの分別、交通手段の確保なども、同じ考え方で設計できます。
お気軽にご相談ください。
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